【??】
「…………ん?」
迎えに来てくれた男子生徒は、俺の顔を見つめたまま大きく目を見開く。
驚愕した表情を浮かべて固まった彼を見て、俺の方も驚いてしまう。
【珠生】
「えっと、どうしましたか。……俺の顔、なんか付いてます?」
【??】
「あ、いや、そんなことはない……」
男子生徒はパチパチと何度も瞬きをする。
訝しがる表情を浮かべてしまった俺に気付いたのだろうか。
彼は取り繕うように、ぎこちない笑みを浮かべた。
【??】
「悪い、何でもないんだ、本当に……。あの名前は……浅賀くんでいい、のかな?話は樒先生から聞いてる。オレは寮長の菖蒲理央。君と同じ、2年」
【珠生】
「浅賀珠生です。よろしくお願いします」
俺は『菖蒲』と名乗った寮長さんに深々と頭を下げる。
【理央】
「ハハ……同学年なんだからそういう堅苦しいのいいよ。顔上げて」
言われるままに顔を上げると、さっきの戸惑った表情は寮長さんの顔から綺麗さっぱり消えていたって自然な笑顔が浮かんでいる。
見ているとこっちの不安が溶けてなくなってしまいそうな爽やかで優しい微笑みに、むしろ今度は俺の方が驚きの表情を浮かべてしまう。
そして、よく見ると……いや、よく見なくても寮長さんはかなり顔が良かった。
【理央】
「改めて、よろしく」
寮長さんは俺に右手を差し出す。
握手を求められていることがわかり、俺は慌ててその手を握る。
【珠生】
「よろしくお願いします」
手の平から伝わる温度に、心臓がドキンと大きな音を立てた。